エボラ出血熱(エボラウイルス病)概要
病原体と分類
エボラ出血熱はエボラウイルスを病原体とする感染症で、主な感染経路は接触感染です。エボラウイルスはフィロウイルス科オルソエボラウイルス属に属する1本鎖RNAウイルスであり、ザイール、スーダン、ブンディブギョ、タイフォレスト、レストン、ボンバリの6種に分類され、ザイールウイルスが最も強い病原性を示します。
感染経路
主として患者の体液等(血液、分泌物、吐物・排泄物)に触れることにより感染します。なお、インフルエンザのように容易に飛沫感染する可能性は非常に低いとされています。
症状
潜伏期間は2〜21日(通常4〜10日)。初期症状は発熱、頭痛、筋肉痛などで、進行すると下痢、嘔吐、発疹、肝機能および腎機能の異常を伴い、さらには出血傾向、意識障害などの重篤な症状を示し死亡することがあります。
流行の歴史
アフリカを中心に1976年以降30回以上の流行が確認されており、2014〜2016年には西アフリカで大流行しました。日本においては患者の報告はなく、自然宿主はオオコウモリと考えられています。
直近では、2025年12月1日、WHOはコンゴ民主共和国カサイ州で発生していたエボラ出血熱の流行終息を宣言しました。この流行では計64症例(確定53例、疑い11例)と45名の死亡が記録され、同国では1976年以来16回目の流行となりました。
ワクチン開発の現状
承認済みワクチン(ザイール型対応)
現在世界で使用可能な3つのエボラウイルスワクチンのうち、米国でエボラウイルス感染症の予防用として使用可能なのは rVSV-ZEBOV のみです。欧州連合(EU)およびカナダと中央・東・西アフリカの数カ国でも使用が認可されています。また、Ad26
2025年9月には、コンゴ民主共和国カサイ州での流行対応として、最前線の医療従事者と感染者の接触者へのワクチン接種が開始されました。「リングワクチン接種戦略」に基づき、感染リスクが最も高い個人を優先して接種するもので、国際ワクチン供給調整グループ(ICG)は約4万5000回分の追加輸送を承認しました。
スーダン型への対応(開発中)
2025年2月、ウガンダ保健省とWHOは、スーダン型エボラ出血熱のワクチンについて世界初の無作為化緊急臨床効果試験を開始しました。ただし、現時点ではスーダン型ウイルスによるエボラ出血熱に効果的に対処できる認可済みワクチンは存在しません。現在ある承認済みワクチンはザイール型のみを対象としています。
治療薬のアクセス課題
承認済みの治療薬(インマゼブ・エバンガ)については、特許やライセンスを通じて民間企業が管理しており、利用可能な治療薬のほぼすべてを米国が保有・管理しているため、流行が最も頻繁に起こる地域では容易に入手できない状況が続いています。
まとめると、ザイール型に対しては承認済みワクチンがあり実際の流行対応に活用されていますが、他の型(特にスーダン型)へのワクチンはまだ臨床試験段階にあります。また、治療薬のアクセス格差も引き続き国際的な課題となっています。現在流行しているブンディブギョ型には、今あるワクチンが効かない可能性があり、すぐに流行を抑えることは難しいかもしれないことが懸念されています。
(東大医科研 河岡義裕教授に内容をチェックしていただきました)インフルエンザウイルス、コロナウイルス、エボラウイルスの研究でご高名な河岡義裕教授の人となりを知ることができるインタビューをご紹介致します。

