
港区は都内でも様々な感染症の流行の立ち上がりが早いのですが、東京都の報告でもいよいよ手足口病について警戒するようアナウンスが出る可能性が高いと思われます。大きな山になるのか、2024年のような2峰性になるのか今後の推移を見守る必要があります。
2026年のアジアの手足口病流行について、現時点(6月末)までに確認できた情報を国別に整理します。今年は例年と異なり、国によって流行株と重症度のパターンが大きく分かれているのが特徴的です。
日本
宮崎県では2026年4月23日、第16週(4月13日〜19日)の時点で定点当たり報告数が5.67となり、流行警報レベル(基準値5)を超えました。患者の約8割が1〜2歳で、例年より早い時期での警報レベル超えです。その後九州を中心に拡大し、第23週(6月1日〜6月7日)の時点で新規報告数は全国4,485人、定点当たり報告数は1.98で第20週以降増加が続いています。都道府県別では鹿児島県(11.35)、大分県(9.31)、熊本県(9.09)が上位です。これは過去5年の同週中央値を大きく上回り、昨年同時期と比べておよそ10倍の水準とされています。
流行株については、日本では2011年以降CA6が主流の年が多く、直近では2023年がEV71・CA6、2024年がCA6・CA10/CA16という組み合わせでした。2026年シーズンの確定遺伝子型は、現時点の検索では明確な発表を確認できませんでした(東京都健康安全研究センターなどの確定報告は今後の発表待ちです)。
死亡例:今回の検索では2026年シーズンの手足口病関連死亡の報告は見当たりませんでした。例年ピークは7〜9月のため、現段階(6月末)ではまだ本格的な重症化シーズン前と考えられます。
ベトナム(最も深刻)
アジアの中で今年最も深刻なのがベトナムです。2026年の最初の3か月で全国25,094例の手足口病が報告され(4例死亡)、南部地域だけで18,031例(全国の71.9%)を占めました。患者の92.7%が1〜5歳でした。その後死亡数は増加し、4月中旬の時点では全国で約26,000例、8例の死亡が報告されています。
検査結果ではエンテロウイルス71型(EV71)の流行が確認されており、神経系合併症を起こしやすく重症化・死亡リスクを高める株です。ホーチミン市の小児病院では2025年にはEV71の検出割合が約10%でしたが、2026年第1四半期には約27%まで上昇しました。重症度の高い症例(2B度以上)も増加しています。一部病院ではECMOや血液透析が必要な重症(4度)例も出ており、病床を92床から150床に拡張する病院もあります。流行のピークは5〜6月、さらに9月から年末にもう一度ピークが来ると予測されています。
台湾(コクサッキーA6が主流、比較的軽症)
ベトナムと対照的に、台湾は今年比較的落ち着いています。4月12日〜18日の腸病毒の診療数は3,526人(前週比+16.5%)で、重症例は累計4例(EV-D68が2例、コクサッキーA4とA16が各1例)。本土の地域流行株はコクサッキーA6が主流で、A4・A16が次いでいます。
注目点として、台湾のEV71ワクチン接種率は約30%で、これが2015年以降の大規模流行抑制に寄与していると考えられています。ただしCVA6に感染して得た免疫はEV71への交差免疫を生まないため、海外(特にベトナム)渡航者は注意が必要との指摘もあります。
中国
中国疾病预防控制中心の月次データでは、2026年5月の丙類伝染病(インフルエンザ・感染性下痢症・手足口病が報告数の98.7%を占める)で死亡3例と報告されていますが、手足口病単独の死亡数は公開データから分離できませんでした。病原体トレンドとしては、従来EV-A71とCVA16が主流でしたが、CVA6がそれに続く第3の主要病原体として定着してきています。
全体像
| 国 | 主流株 | 傾向 |
| 日本 | 未確定(例年CA6中心) | 例年より早期に流行開始、現在拡大中 |
| ベトナム | EV71 | 深刻、死亡8例(4月時点)、重症例多数 |
| 台湾 | CVA6 | 比較的軽症、EV71は抑制的 |
| 中国 | EV71/CVA16/CVA6混在 | 国全体の死亡数は分離データなし |
今年の特徴は、EV71の周期的な再流行がベトナムを直撃している一方、日本・台湾は比較的軽症のCA6/CVA6が優位という、国によるコントラストが明確な年だという点です。以前注目されていた手足口病の二峰性流行パターンの議論(2024年)とも関連しますが、今年はさらに「国・地域による株の違い」という軸が加わっている印象です。

